LOS ANGELES, CA - JANUARY 10: Nic Pizzolatto attends the HBO premiere of True Detective Season 3 at DGA Theater on January 10, 2019 in Los Angeles, California.(Photo by JB Lacroix/WireImage)
アカデミー賞では主要5部門のひとつはずなのに、なぜか地味な印象のある脚本賞。
クエンティン・タランティーノやウディ・アレン、ウェス・アンダーソン、クリストファー・ノーランなど脚本兼任の監督ならご存知の方も多いと思いますが、ハリウッドは基本的に分業文化で彼らのような兼脚本の監督はむしろ珍しいんです。
映画評論家の大半は「演技」と「脚本」にばかり言及しますが監督の名前と俳優の名前は挙げても、脚本家の名前はあまり挙がりません。
一般ファンの方にも自分の好きな作品の脚本家名を言える人は意外と少ないんじゃないでしょうか?
それではあまりにもアンフェアだしもったいないので、今回は「監督もやっているけど基本的に脚本のみをメインフィールドにしている現代の名脚本家たち」を挙げてみました。
(完全なる自分基準選出です)
※特に注記してませんが、テレビドラマの脚本は基本的に複数脚本家の持ち回りです。
代表作
『メメント』(2000・原案)
『ダークナイト』(2008)
『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』(2011-2016)
『インターステラー』(2014)
『ウエストワールド』(2016-)
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時間逆行サスペンスの『メメント』、ウラシマ効果を取りいれた『インターステラー』、犯罪を予知するAIが登場するサスペンス『PERSON of INTEREST』など意表を突いたギミックが特徴の人。
ギミックの奇想天外さに反して話づくり自体は王道で、それが万人受けする結果につながっているのでしょう。
兄で映画監督のクリストファーも名脚本家で二人の芸風はよく似ていますが、一点違うところがあります。
それはユーモア。
ジョナサンの参加作品はシリアスな中にユーモアがあり、それが彼独自のカラーになっています。
テレビでは一部エピソードで演出も担当。
こちらでも手堅くいい仕事をしています。
代表作
『レナードの朝』(1990)
『シンドラーのリスト』(1993)
『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2001)
『マネーボール』(2011)
※「マネーボール」「ギャング・オブ・ニューヨーク」は共同脚本
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名前を聞いてもピンと来ない方がけっこう多いのではないかと思いますが、『レナードの朝』『シンドラーのリスト』『ギャング・オブ・ニューヨーク』『マネーボール』など数々の名作映画で脚色の腕を揮ってきた名人中の名人です。
枝葉のエピソードは刈り取とって流れを良くし、起承転結のはっきりしないノンフィクションものでは一本の筋道がつくように構成し直しという脚本作りのお手本のような職人技の持ち主です。
アーロン・ソーキンと共同で執筆した『マネーボール』は私にとってのザイリアンの最高の仕事です。
『マネーボール』原作はノンフィクションで、オークランド・アスレチックスGMのビリー・ビーンがどのような手法を取って成功したかという事実と理屈に重きが置かれています。
映画ではこれをビーンという人物がチームの主力選手流出という危機を知恵で乗り越えるシンプルな正統派ドラマに構成しなおされています。原作にはハッキリとした筋がありませんので、これを映画らしい脚本にするのは難事だったでしょう。
ザイリアンとソーキンという名人二人の知恵の結晶ですね。
代表作
『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)
『インサイダー』(1999)
『ミュンヘン』(2005)
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008)
『アリー/ スター誕生』(2018)
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前述のザイリアンと似た芸風の手堅い職人です。
『フォレスト・ガンプ/一期一会』でアカデミー賞を受賞。
以降も主に脚色の分野でコンスタントに良質な仕事をこなしています。
最近は70歳を過ぎて老齢の域に達したからか鳴りを潜めていましたが、『アリー/ スター誕生』で共同脚本家としてアカデミー賞候補に。
まだまだ健在であることを示しました。
代表作
『ロー&オーダー~』シリーズ(1990-)
『シカゴ~』シリーズ(2012-)
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『ロー&オーダー』から始まる一連のユニバースの創始者。
同シリーズ開始が1990年ですので彼が創造したユニバースは今年で30年目を迎えることになります。
最近では傾向が変わってきていますが、ウルフの脚本は話づくりの1パターンである「プロット主導型」の極めて鮮度の高い一例です。
『ロー&オーダー』シリーズにおいて刑事も検事も事件を動かすためのピースに過ぎません。
なので彼らの私生活は全くか殆ど描かれませんでした。
主役は彼らではなく事件そのものです。
同シリーズは毎エピソードの後味の悪さが一つの特徴になっていましたが、その後味悪さに刑事や検事の私生活が含まれていたらもっとウェットな情感になっていたことでしょう。
ウルフは「プロット主導型」のある種究極系を極めた人と言えます。
代表作
『TRUE DETECTIVE』シリーズ(2014-)
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ピゾラットはもともと作家としてキャリアをスタートさせており、優れたミステリー・サスペンスに与えられるエドガー賞の候補にもなっています。自作小説の映画化で自ら脚本を担当したことから映像の脚本家としてのキャリアが始まり、HBOのミニシリーズ『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』で広くその存在を認知されるようになります。
同シリーズは3シーズンまで制作されていますが、ほとんどがピゾラットの単独脚本。
テレビの脚本は複数人で持ち回りが当たり前ですので、これは異例の体制です。
それが許される理由はおそらくミニシリーズであることと、脚本の完成度の高さではないかと思います。
『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』は各方面で絶賛されましたが、同作の脚本はある種の理想形の一つです。
話づくりには本格ミステリーなどの「プロット主導型」とメロドラマなどの人物を主眼においた「キャラクター主導型」がありますが、『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』はその両方の要素を極めて高いレベルで成立させています。
『~二人の刑事』は1シーズンまるまるキャリー・フクナガが一人で演出しましたが、フクナガのロングショットを多用した映像美も格調高い脚本にぴったりマッチしていました。
脚本家と監督の理想的なコラボの一例ですね。
今回は5人取り上げましたが、5人のうち何人の名前に覚えがあったでしょうか?
もっと他にも挙げたいのですが、それはまた回を改めるとしましょう。
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