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香港・マカオを舞台に政治の闇を描く英国本格ミステリー『ホワイト・ドラゴン』の見どころをご紹介!

◇ストーリー

ロンドンで教鞭をとる大学教授ジョナ・マーレイ(ジョン・シム)は、香港に出張中の妻ミーガン(ダーヴィア・カーワン)が交通事故で死亡したとの連絡を受け、すぐさま現地へ。香港の不動産会社に勤務するミーガンは、しょっ中、長期出張していましたが、ジョナは飛行機恐怖症で香港へ行かずじまい…。それが、突然、悲劇に見舞われ呆然と初の香港へ足を踏み入れることになります。
ジョナは英国領事館に勤務するサリー・ポーター(エミリア・フォックス)と共に地元警察で身元を確認しますが、警察の対応に疑問と不信感を強めます。しかも、妻には香港で結婚生活20年になる元警官の夫デヴィッド(アンソニー・ウォン)がおり、彼との間に大学生の娘ラウ(ケイティ・リューング)までもうけていたことを知り大ショックを受けるのです。さらに、妻が残したスマホからは、彼女が何者かに殺されたことを証明する音声データを発見。ところが、証拠として警察へ提出した音声データが一部消去され、あろうことか銃撃された弾痕が残っているはずの妻の遺体が安置所から消え、汚職の蔓延する警察が信用できないと思い知ったジョナはデヴィッドに協力を頼み、妻の事故を調べ始めます。
一方、行政長官選挙の有力候補者である大富豪の実業家ゾウ(ケネス・ツォイ)の政策に反発し、学生運動に身を投じるデヴィッドの娘ラウのまわりでも不審な動きが…。事件の背景とは、ミーガンの死の真相とは?はたしてジョナはつきとめることができるのか? 

◇意外すぎるまさかのバディ設定

ミステリーや刑事ものの海外ドラマといえば、『SHERLOCK/シャーロック』や『HAWAII FIVE-0』などバディものが王道です。でも、本作のバディは異色すぎる設定。

お互い知らないうちに同じ相手と同時期に結婚していた夫同士がタッグを組むハメになるのです。同じ大学に通うメーガンに憧れていたのに告白できず、時を経てようやく思いをとげた結婚3年めのイギリスの大学教授ジョナ・マーレイ。香港でメーガンと結婚して20年。ふたりの間にはひとり娘がいる元警官のデヴィッド。妻の死をきっかけに重婚を知り激しい衝撃を受けるふたりですが、その死の真相を探るために、仕方なく協力します。

理論派でしゃべりすぎて妻をウンザリさせたジョナ、無頼派で無口で妻に怒られたデヴィッド、すべてに正反対のふたりが嫉妬や葛藤を抱えながら、しだいに心を通わせていく過程を丁寧に描きます。

また、事件を追ううちにタフになっていくジョナの変貌ぶりも見どころのひとつです。自称「引きこもりの研究者」が、妻の死の謎を解くため異国でバイオレンスの世界に巻き込まれていく。殴られ気絶したり、殺人の容疑者にされるうちに、鍵を壊して不法侵入、賄賂を摑ませ、どんどんたくましくサバイバルしていくのです。軟弱な教授から監視カメラの映像を盜み出すジェームス・ボンドへの変貌ぶりが淒まじい。

知的な教授役がぴったりのジョナを演じるジョン・シムは、海外ドラマ『時空刑事1973 ライフ・オン・マーズ』などが代表作の英国の人気俳優です。元香港警察のデヴィッドを演じるのは『インファナル・アフェア』など数々のアジア映画で活躍するアンソニー・ウォン。英国と香港の実力派がタッグを組み、戸惑いと怒りが交錯するふたりのキャラクターを見事に表現しています。

加えて、事件解決後のラストが、たんなる真相究明だけに終わらず、「愛」にいきつくのがなんとも新鮮でジーンときます。

◇英国と香港の関係があってこその秀逸のミステリー

ビクトリアピークから望む香港の風景 晴天

ここで簡単に2つの国の関係をおさらい。香港はかつて、150年以上にわたってイギリスの植民地として目覚ましい発展をとげてきました。 1997年、香港は中国に返還され特別行政区となります。中国は返還後50年間は香港の現状を維持すると約束、一国二制度をとったのですが、一方で言論統制や選挙への介入も行なったため、市民のデモが頻発しました。最近では、中国政府に対する反逆、分離、扇動を禁止しようとする「国家安全法」が香港でも導入される方針で、警察とデモ隊の激しい対立が続いています。英国はこの中国の約束違反に、もし導入されれば約30万人の香港人が持つ英国海外市民旅券(BNO)の所有者をイギリスに受け入れると可能性があると表明し大きなニュースになりました。

《香港》旺角(もんこっく)・ネオン街

このように英国と香港の関係には長い歴史があり切っても切れない関係で、それだけに知られざる深い闇があります。そんなイギリス政府と香港の大企業の関係が本作の要となっているのです。しだいに解き明かされる複雑な人間関係と二転三転する展開に最後の最後までハラハラしっぱなし!

香港の面積は東京都の約半分、そこにおよそ730万人が暮らしている「蜜」レベルが高い都市。魔都と称されることもある、怪しさ、猥雑さのカオスと、100万ドルの夜景や林立する高層ビル、英国スタイルの街並みが共存するのが香港の魅力です。
10回以上は訪れていますが、あの道に迫り出す看板、鮮やかな色の氾濫、独特のイントネーションで声高に喋る人々のエネルギーに到着初日はいつも圧倒されます。でも、現地の友人と食い倒れ三昧しているうち、しだいに同化して日本にいるときよりがぜんパワフルになっていくのです。

ドラマのなかでジョナがタフになっていくのは、風水的にみていい「気」があるといわれる香港のパワーが後押ししたのかもしれません。

本作では、香港&マカオの観光ポイントを巧みに組み込んだ様々なシーンもとても印象的。いかがわしさ満開の屋台が並ぶ女人街での逃走、世界最長を誇るヒルサイド・エスカレーターでの移動、美しい風景を見下ろす高層階のバーやレストランでの会食、マカオのカジノ、最後にジョナが訪れる世界一大きな大仏があるランタオ島のポーリン禅寺など。ちなみに銀座のような一等地に立っているのに怪しすぎるディープな複合ビル「重慶大厦(チョンキンマンション)」でのジョナの買物にはクスっと笑いが漏れるはずです。

もとはポルトガル領だったマカオは西洋風の街並みとゴージャスなホテルが立ち並び、ヨーロッパのリゾートのような雰囲気が味わえる場所。

ちなみにマカオのカジノは、ゴージャスなホテルのなかにあっても本作と同じく殺伐とした感じがしました。本場ラスベガスと違ってゲームを楽しむと言うより、お酒を飲まず本気で勝負に賭ける人が多いようです。

本作は現地の観光スポットをたっぷり取り入れ、英国だけでは決して出せないエキゾチックで刺激的なドラマの世界観を表現しているのです。

マカオ セナド広場

◇アンソニー・ウォンの生い立ちに重なるストーリー

デヴィッドを演じるアンソニー・ウォンは猟奇殺人犯を演じた『八仙飯店之人肉饅頭』(1993)で香港のアカデミー賞といわれる金像の最優秀主演男優賞を初受賞。『BEAST COPS 野獣刑警』(1998)、そして『淪落の人』(2018)で計3度、同賞に輝いた実力派俳優です。本作でも妻の死と反抗的な娘に苦悩するキャラを存在感たっぷりに演じています。

英国と香港のハーフで濃い顔立ちの彼は、4歳のときに行き別れになったイギリス人の父親をずっと探していました。それがフェイスブックに父親を探すために家族写真を掲載し、BBCの取材を受けたことで家族の存在が明らかに。異母兄弟に当たる2人のイギリス人男性が見つかったのです。ふたりは74歳の双子で、現在はオーストラリア在住。残念ながら香港政庁の役人だった父親は1988年にすでに他界していました。生前、父親はアンソニーについて何も話さず、義兄弟たちはもうひとつの家庭があったことを全く知らなかったといいます。まるで本作の娘ラウを地でいく人生ドラマに切なさが止まりません。植民地時代が長かった香港では、アンソニーのようなケースが数多くあったようです。

実はアンソニーを初めて取材したのは実在の猟奇殺人事件をもとにした『八仙飯店之人肉饅頭』(1993)で金像賞を初受賞したときでした。「おめでとうございます」とお祝いの言葉をかけたら「こんな作品でとっても嬉しかないよ」と苦笑いしながらストレートすぎるコメントが返ってきてどう反応していいのか困ったことを思い出します。とにかく忖度なしの本音で語る熱いキャラ。それだけに、返還以降、中国の意向を汲む香港政府のやり方を真っ向から批判し、かなり睨まれていたとか。

今後の仕事のこともあり、台湾に国籍を移すことにしたそうで、すでに台湾ドラマに出演するという話も伝えられています。英国の次は台湾でどんなキャラクターに挑戦するのか、アンソニーの新たな活躍に期待したいですね。

©Two Brothers and all3media international

■AXNミステリーチャンネル
『ホワイト・ドラゴン』7月27日(月)夜10時スタート。


特集『最新!世界を旅する英国ミステリー』予告編 アムステルダム、カリブ海の島、スペイン、スウェーデン、香港… 異国を舞台に描かれる英国ミステリーをOA! - ミステリー専門チャンネル AXNミステリー - YouTube

ホワイト・ドラゴン | AXNミステリー

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村上淳子

海外ドラマ評論家、映画ジャーナリスト 「ニュースよりドラマを観るほうがその国がよ...

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gilbertcocteau

2020/09/18 19:54

相当笑える

5

「モダン・ファミリー」

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