近年、アメリカTV界では「消防ドラマ」の需要が高まっている。
NBCでは『シカゴ・ファイア』が、FOXでは『9-1-1：LA救命最前線』といったように、消防局の日常や救命活動をメインテーマにしたTVドラマが大ヒットを記録するジンクスのようなものさえ感じさせる。
しかしながら、「消防ドラマ」というジャンルは、マンネリ化しやすい危険性も伴う。
同じく一話完結型の「犯罪捜査ドラマ」や「医療ドラマ」と比べると、どうしても事件や事故の描写、消防士たちのキャラクター設定などが似通ってしまうことがある。
現在、「消防ドラマ」の需要が高まると同時に、他作品との差別化がとても難しくなっている現状だ。
そんな中、2018年より米ABCで放送が始まったのが、『STATION 19』である。
メディカル・ヒューマンドラマ『グレイズ・アナトミー』のスピンオフとして製作された同作は、他の「消防ドラマ」とは一線を画す異彩を放っている。
ここでは、斬新な切り口の消防ドラマ『STATION 19』の魅力に迫る！

大ヒット医療ドラマ『グレイズ・アナトミー』のスピンオフ

そもそも『STATION 19』は、米ABCで放送中の大ヒット医療ドラマ『グレイズ・アナトミー』から派生した作品だ。

UNITED STATES - JANUARY 23: 101962_R003_0031 -- GREY'S ANATOMY - "Grey's Anatomy" focuses on young people struggling to be doctors and doctors struggling to stay human. It's the drama and intensity of medical training mixed with the funny, sexy, painful lives of interns who are about to discover that neither medicine nor relationships can be defined in black and white. Real life only comes in shades of grey. (Photo by Frank Ockenfels/Walt Disney Television via Getty Images)

アメリカTV界を代表するプロデューサーであるションダ・ライムズ原案・脚本・製作総指揮により、2005年より米ABCで放送が始まった同作は、シアトルの大病院を舞台に若き研修医たちの奮闘とプライベートにフォーカスした内容が繰り広げられ、それまでリアリティを追求したシリアスな作品が多かった「医療ドラマ」というジャンルにラブコメ要素を取り入れることで、新境地を開拓。
医師たちのヒューマンドラマも色濃く描くことで、より感情移入を誘う作品として人気を博した。
現在までにシーズン17まで製作されており、「医療ドラマ」というジャンルの中で最も長く続いた名作『ER 緊急救命室』を超えて、新たな金字塔を打ち立てた作品である。
そんな同作は、2007年に初のスピンオフとなる『プライベート・プラクティス』が誕生。2013年まで6シーズンが放送された。
その後、『グレイズ・アナトミー』に集中する形で物語が進行していたが、『プライベート・プラクティス』放送終了から5年後となる2018年に消防ドラマ『STATION 19』が誕生したのだ。